農業向けの機械・設備は、屋外での使用や粉塵・水分にさらされる環境、限られた車体スペースへの搭載など、一般的な産業機器とは異なる使用条件が求められるケースが少なくありません。そのため、農業機械や設備の設計にあたってモーターを選定する際、カタログに掲載されている標準品では出力や設置スペース、耐環境性能などの要件を満たせない場合もあります。
本記事では、農業分野でモーターに求められる性能や主な種類、活用例・実際の導入事例を整理したうえで、自社製品に適したモーターを選定する際に押さえておきたいポイントを解説します。
農業分野では、担い手の高齢化や労働力不足が進む中で、作業の自動化や省力化を実現する機械・設備の導入が進んでいます。トラクターの自動走行、ハウス栽培における灌水の自動化、収穫後の選果や搬送作業の機械化など、その用途は多岐にわたります。
これらの機械・設備を動かす駆動源として、モーターは重要な役割を担っています。近年は、センサーや制御システムと連携した「スマート農業」の普及に伴い、精密な制御が可能な高効率モーターへの需要も拡大しており、機械・設備を開発するメーカー側にも、用途に応じたモーター選定や設計の検討が求められています。
農業機械・設備の多くは屋外やハウス内など、土埃や水分にさらされやすい環境で使用されます。そのため、内部に粉塵や水滴が侵入しにくい、IP54やIP65相当の防塵・防滴性能を備えたモーターが求められます。
収穫期や繁忙期には、機械・設備を長時間にわたって連続稼働させる場合があります。モーターには、こうした連続運転にも耐えられる耐久性が求められます。
屋外で使用される農業機械・設備は、夏場の高温や冬場の低温など、気温差の大きい環境下に置かれることがあります。そのため、幅広い温度条件下でも安定して動作する性能も重要な要件のひとつです。
農業機械は、車体やハウス内の限られたスペースに設備を組み込むケースが多く、モーターの外形寸法や出力軸の形状が標準品の仕様と合わないことがあります。既存の機械に後付けする場合や、機体の小型化を図る場合には、標準品をそのまま流用できず、外形や取り付け方法を変更したカスタム設計が必要になることもあります。
DCモーターは直流電源で駆動するモーターで、灌水設備のバルブ開閉や小型の搬送機構など、出力100W以下の小型モータに分類される駆動用途で使用されます。ブラシ付きDCモーターは構造がシンプルでコストを抑えやすい一方、ブラシレスDCモーターはブラシの摩耗がなく、長寿命でメンテナンス負担を軽減しやすいという特徴があります。
ACモーターは交流電源で駆動するモーターで、構造が比較的シンプルで耐久性に優れることから、ポンプや搬送用コンベアなど、連続運転が求められる設備で使用されます。
油圧モーターは、油圧ポンプで発生させた油の圧力を回転力に変換するモーターです。高い出力が得られることから、トラクターをはじめとする大型の農業機械の駆動に使用されます。
GPSなどの衛星測位システムと連動して走行するトラクターなどの自動走行システムでは、ステアリングなどの操舵機構を動かすためにモーターが使用されます。
ハウス栽培や露地栽培における灌水設備では、給水ポンプの駆動やバルブの開閉にモーターが使用されます。設定した時間や条件に応じて自動的に灌水を行う仕組みに組み込まれています。
収穫した青果物をサイズや重量ごとに選別する選果機では、青果物を搬送するコンベアや、選別機構を動かす駆動部にモーターが使用されます。
収穫物やコンテナを移動させる搬送設備では、コンベアやリフト機構の駆動源としてモーターが使用され、収穫後の運搬作業の省力化を支えています。
農業用のモーターを選定する際は、まず使用環境(屋外か屋内か、粉塵や水分にさらされる頻度、想定される温度範囲)を整理したうえで、必要な防塵・防滴性能や耐久性を明確にすることが重要です。あわせて、機体や装置に組み込む際の設置スペース、モーターの外形寸法、出力軸の形状といった機械的な制約条件も、選定の初期段階で洗い出しておく必要があります。
また、スマート農業化を見据える場合は、センサーや制御システムと連携できる仕様かどうかも検討事項となります。
カタログに掲載されている標準品だけでは、これらの要件をすべて満たせないケースもあります。「設置スペースに収まらない」「必要な出力や耐環境性能が得られない」といった理由で、これまで依頼していたメーカーから対応を断られることも考えられます。そうした場合は、小ロットや1個からのカスタム設計・製造に対応できるモーターメーカーへ相談することが解決策のひとつです。
農業分野では、自動走行システムや灌水設備、選果機、搬送設備など幅広い用途でモーターが活用されており、屋外環境での使用を前提とした防塵・防滴性能や耐久性、設置スペースへの適合が共通して求められます。標準品のカタログスペックが自社製品の要件に合わない場合は、小ロットや1個からのカスタム設計・製造に対応できるモーターメーカーへ相談するのが解決の近道です。ぜひ一度問い合わせてみてください。