モーターの信頼性や安全性を支えるのが「絶縁」です。ですが、絶縁はさまざまな要因により劣化を起こしていきます。この記事では、絶縁劣化の診断方法や劣化についてまとめていますので、参考にしてみてください。
モーター内部で進行する絶縁の劣化状態を、設備を分解することなく評価する技術が「絶縁診断」です。モーターを健康診断や人間ドックにかけるようなものであり、複数の手法を組み合わせて総合的に状態を把握できます。
モーターの巻線と筐体間に直流高電圧を印加し、絶縁抵抗値(漏れ電流の逆数)を測定する試験です。いわゆるメガオームメーター(メガー)を用い、端子とアース間の抵抗値を計測します。絶縁抵抗値が高いほど絶縁劣化が少なく、漏電しにくいことを意味します。
絶縁抵抗試験よりも高い電圧を巻線に加え、絶縁破壊しないことを確認する試験です。定格電圧を上回る直流電圧を一定時間印加し、漏れ電流値を監視します。絶縁材料の隠れた欠陥や劣化箇所があると、電流値の異常や絶縁破壊が生じるため検出可能です。ただし高電圧を印加するため絶縁へのストレスが大きく、慎重な実施が求められます。
絶縁体内部や表面で発生する微小な放電(部分放電)を検出し、内部欠陥の有無を診断する技術です。絶縁に劣化や空隙が生じると、運転電圧下でも局所的な部分放電が起こります。この放電は発光・微少な電流パルス・超音波などを伴うため、高感度センサーや高周波電流トランスを用いて検出します。
絶縁物をコンデンサに見立て、交流電圧を印加してその誘電損失(エネルギー損失)を測定する試験です。
コイル間絶縁の健全性、特に巻線内部のターン間短絡(層間ショート)を検出するための試験です。
赤外線サーモグラフィーカメラを用いて運転中のモーターの表面温度を可視化し、異常な高温箇所(ホットスポット)がないか調べる手法です。
モーターは稼働中、常に様々な負荷に晒されており、その内部にある絶縁材料は徐々に性能が低下していきます。これは避けられない自然な経年変化であり、主な原因は熱・電気・機械的な力・設置環境という4つです。
例えば、運転中に発生する熱は絶縁材を硬くてもろくさせ、振動などの機械的な力は目に見えない微小な亀裂を生じさせる場合があります。
これらの要因は互いに影響し合って劣化を加速させることがあります。機械的な力で生じたわずかな隙間で、電気的なストレスによる微小な火花(部分放電)が発生し、それが熱を生んでさらに材料を傷つけてしまうのです。絶縁劣化は単一の原因ではなく、複数の要因が絡み合って静かに進行していく現象といえます。
診断を行うことで、現在の絶縁性能がどのレベルにあるのかを客観的なデータとして評価できます。さらに、定期的に診断を実施して前回のデータと比較すれば、劣化がどのくらいの速さで進んでいるのかという傾向もわかります。蓄積した傾向を管理・分析することで、故障という形で症状が表面化する前に、適切なタイミングでメンテナンス計画を立てることが可能です。定期的な診断を欠かさないようにしましょう。