モーターの回転速度を自由に操りたい場合に使われている技術が「PWM制御」で、モーターの性能を効率よく引き出すための重要な鍵となります。この記事では、PWM制御がどのような仕組みで、なぜモーターの制御に適しているのかを分かりやすく解説します。
PWM制御(パルス幅変調)とは、電源のONとOFFを人間の目には見えないほど速く繰り返す技術のことです。スイッチを高速で点滅させ、そのONになっている時間とOFFになっている時間の「割合」を変えることで、モーターに伝わる平均的な電力を調整します。このON時間の割合は「デューティサイクル」と呼ばれ、例えばデューティサイクル50%なら、モーターには最大パワーの半分の電力が供給されることになります。
この技術の優れた点は、ONかOFFかという単純なデジタル信号を使いながら、モーターの回転速度のような滑らかなアナログ的な結果を制御できることです。デューティサイクルを0%(常にOFF)から100%(常にON)の間で細かく変えることにより、モーターをゆっくり回したり速く回したりと、自在な速度調整が可能になります。
電源が高速でON/OFFされているにもかかわらず、モーターが滑らかに回転するのは、モーター自身が持つ2つの性質が関係しています。1つ目は、モーター内部のコイルが持つ「電流の変化を嫌う性質(インダクタンス)」で、これにより電圧が途切れても電流はすぐにはゼロにならず、ある程度流れ続けようとします。この電気的な特性が、細切れの電圧パルスを、より滑らかな電流に平均化する働きをします。
2つ目は、モーターの回転部分が持つ物理的な「慣性(重さ)」で、重いものが急に止まったり動いたりできないのと同じ原理です。断続的に与えられる電力の「キック」は、この機械的な慣性によって平均化され、結果として安定した連続的な回転が生まれます。このように、モーターは電気的・機械的な両方の側面で、高速なON/OFFを平均化するフィルターのような役割を果たしているのです。このPWM制御の仕組みは、従来の制御方法と比べてどのような利点をもたらすのでしょうか。
PWM制御が広く使われる理由は、従来のアナログ(リニア)制御と比べ、特に2つの利点があるからです。第1に、非常に電力効率が高く、発熱が少ない点が挙げられます。アナログ制御では余分な電力を熱として捨てて速度を落としますが、PWM制御はスイッチが完全にONかOFFのどちらかであるため、電力の無駄がほとんどありません。
第2の利点が、低速でも力強いトルク(回転力)を維持できることです。アナログ制御で電圧を下げるとモーターの力も弱くなってしまいますが、PWM制御ではONの瞬間は常に最大の電圧がかかります。そのため、平均速度は遅くても、瞬間瞬間の力は強く、重いものを持ち上げながらゆっくり動かすような精密な動作も可能になるのです。
PWM制御の信号を作るためには、マイクロコントローラ(マイコン)が重要ですが、マイコンそのものはモーターを直接動かす力を持っていません。マイコンの出力は電圧や電流が小さく、いわば「頭脳」の役割しか果たせないため、モーターという「筋肉」を動かすには別の部品が必要です。そこで登場するのが「モータードライバ」と呼ばれる電子回路です。
モータードライバは、マイコンからの「速度をこれくらいに」「こっちに回って」という小さなPWM信号を受け取ります。そして、モーター用の別の大きな電源を使い、その信号通りに大電流をON/OFFしてモーターに供給する「仲立ち」の役割を担います。さらに、電流の向きを切り替えてモーターの正転・逆転を制御する機能も持っています。
便利なPWM制御ですが、高速で電流をON/OFFするという特性上、いくつか注意すべき点もあります。代表的なものが「音」と「電気ノイズ」です。スイッチングの周波数が人間の耳に聞こえる範囲(可聴域)にあると、「キーン」という甲高い音(PWM鳴き)が発生することがあります。
この可聴ノイズは、PWMの周波数を人間の耳に聞こえない20kHz(キロヘルツ)以上に設定することで、ほとんどの場合解消できます。また、高速なスイッチングは周囲の電子機器に影響を与える電気ノイズ(EMI)も発生させやすいため、モーターの端子にコンデンサを取り付けるなどの対策が必要になる場合もあります。これらの特性を理解し対処することが、PWM制御をうまく使いこなすコツと言えるでしょう。
PWM制御は、単純なON/OFFの繰り返しというデジタル的な手法でありながら、モーターの速度を滑らかに、かつ効率的に制御できる優れた技術です。電力の無駄が少なく、特に低速回転時でも力強さを失わないという特性は、ロボットや精密機器など、現代の多くの製品にとって不可欠なものとなっています。