大型のクレーンなど、大きなトルクを必要とする設備やシーンで使われている巻線形三相誘導電動機。トルクや速度の制御・調整も可能です。このページでは、巻線形三相誘導電動機の特徴や構造のほか、速度調整について解説しています。
巻線形三相誘導電動機は、かご形誘導電動機のローター部の鉄心に三相コイルを巻いている電動機のことです。これによって大きなトルクが発生するため、かご形誘導電動機の代用として使われる場合があります。特に始動時に大きなトルクが求められる時や、かご形誘導電動機では負荷に耐えられない時などに巻線形三相誘導電動機が使われます。また、巻線形三相誘導電動機は速度制御が可能なため、速度の調整と始動・停止を頻繁に繰り返す場合にも広く用いられています。
巻線形三相誘導電動機の構造は、基本的にかご形誘導電動機とほぼ同じです。大きくローターとステーターに分けられますが、先に触れたとおり、ローターにもコイルを巻いている点がかご形誘導電動機と異なります。
巻線形三相誘導電動機を始動する際は、ローターに抵抗が生じて流れる電流が抑制されます。しかし、定格回転数に達した際に二次抵抗をショートさせることで、一般的なかご形誘導電動機と同じ状態になります。ローターの抵抗は内部の二次抵抗器が調整を行っています。
巻線形三相誘導電動機は、ローターに流れている電流を二次抵抗器が可変させ、回転磁界とローターの間に発生する誘導電流の相互作用を制御しています。このような制御方法を二次抵抗制御と呼びます。巻線形三相誘導電動機は、二次抵抗制御によって速度が調整できる仕組みになっています。二次抵抗制御は、抵抗が生じるために効率がよい方法とはいえません。一方で順次短絡が可能で、スムーズなモーターの始動を実現しています。
また、二次抵抗を可変させることで、柔軟に速度を調整・制御できます。こうした仕組みがあるため、始動や運転、停止といったプロセスを頻繁に繰り返す設備や機器に適しており、制度の高い速度調整も可能にしています。
巻線形三相誘導電動機にAC電源を投入すると、内部に回転磁界が発生します。そして回転磁界と作用してローターが回転する仕組みですが、ローターが回転する速度は同期速度と呼ばれています。同期速度は電源の周波数と極数で変動します。基本的に極数が多いと同期速度が低下します。また、同じ極数でも50Hzと60Hzでは同期速度が変化します。50Hzの環境下では、60Hzに比べて同期速度が遅くなります。