DCモーターは大きく分けて「ブラシ付きDCモーター」と「ブラシレスDCモーター」の2種類で、主に小型のモーターに使用されています。DCモーターの構成と構造について詳しくみていきましょう。
DCモーターは、電化製品から工業用の大型プラントまで、さまざまな分野で導入されているモーターです。磁石と導体で構成されているのが「DCモーター」。界磁には「巻線界磁」と「永久磁石」の2種類がありますが、永久磁石が主流のようです。DCモーターは回転子が電機子(トルクを発生する導体部分)。電機子に使用している巻き線(コイル)のことを「電機子巻線」と呼びます。ローターには整流子、直流電源回路にはブラシを設置。DCモーターは直流電源で作動するモーターで、主に小型のモーターに使用されています。
磁場・電流の供給が必要なく、磁石としての特性を長期にわたって保ち続けている磁石のことを「永久磁石」と呼びます。この磁石を固定子として活用したモーターが「永久磁石界磁型」です。
このモーターは自動車補機用モーター・模型用モーターなど世界中で幅広く活用されており、ロータによってスロット型・スロットレス型・コアレス型の3つに分類されています。
磁性材料の芯にコイルを巻き付けたものを「電磁石」と呼び、コイルに通電させて一時的に磁力を発生させることができる磁石です。電磁石界磁型によって界磁束を生み出します。電機小巻線と界磁巻線との結線によって、分巻モーター・直巻モーター・他励モーターの3種類があり、中型~大型のモーターで導入されています。
DCモーターは、磁石のN極とS極がそれぞれ向かい合わせになるように配置され、固定しています。両極の間に回転式の電磁石があり、電磁石のN極とS極の電極は円弧状です。電極と接するようにブラシを固定し、ブラシに接続した直流電源から電磁石に電圧を与えているのです。ブラシは電磁石のN、S極の電極の真ん中あたりの隙間にあるため、電磁石には電気は通っていませんが、電磁石は回転し続けています。
ブラシは反対の電極と接触して、電磁石に流れる電流が逆になるため、電磁石のS極とN極が入れ替わり、永久磁石と電磁石のS極同士が接近し反発し合った結果、電磁石は時計と反対の方向に回転します。
N極とS極の永久磁石を向き合って設置することで磁界が発生します。磁界の向きは、N極からS極へ向かう形となります。磁界の中央に、コイルを置きます。
磁界の中央に置いたコイルの両端は、整流子と繋がっていて、整流子は電極であるブラシと接触しています。整流子とは、コイルへ電流をタイミングよく流す出入口のこと。電磁石の軸に整流子を設置し、コイルの動線の両端を整流子の端と端につなげます。電流を流すと、プラス側のブラシから整流子、コイル、マイナス側の整流子、ブラシという順番で流れていきます。磁界の中にあるコイルに電流が流れるとき、電磁力が生まれます。この電磁力がモーターを回転させる力となるのです。
発生した電磁力は、フレミング左手の法則に沿った向きに力が働きます。フレミング左手の法則は、電流・磁界・力の向きを求める法則です。電流と磁界の向きをフレミング左手の法則に当てはめてみると、N極側のコイルは上向き、S極側のコイルは下向きに力が働きます。このことは、コイルが時計回りに回転することを意味しています。コイルが90度回転すると、整流子はブラシから離れます。電流が流れず、電磁力は失われますが、惰性によって回転は止まりません。整流子が再びブラシに接触すると電流が流れ、電磁力が再度発生するという仕組みになっています。
コイルが半回転に達した際、整流子によって、コイルの電流の向きが反対になります。整流子と同様に電磁石に電流を流す入口となるものがブラシです。ブラシも電流を逆転させるために欠かせません。ブラシは、整流子に触れながら電流を流します。整流子が回転しているため、ブラシの整流子に触れる部分は常にこすられています。ブラシはモーター本体に固定されており、電源から配線が繋がっています。電流を流すとローターが電磁石となって周りはじめます。切れ目のところで電流が切れますが、惰性で通り過ぎて反対側になったとたん、さっきまでと逆向きの電流が流れる仕組みです。電磁力が働く方向が維持され、コイルを同じ方向に回転させ続けることができます。整流子がないとコイルの電流の向きが反対になりません。そのため、半回転した時点で反時計周りに回転してしまいます。時計周りと反時計回りを繰り返すだけになるため、電流を一定方向に流す整流子が必要です。
HDD・CD-ROMドライブの駆動用やCPUの冷却ファンなどにDCモーターが使用されています。ただし、ブラシやコミュテータの摩耗によるダストが機器に影響を与えることがあるため、ブラシレスDCモーターを採用することが一般的です。
DVDやブルーレイディスクの再生機器などにも用いられています。また、オーディオCDといった音響機器に使用されることも。
小型扇風機や電動歯ブラシ・シェーバーの振動体駆動、ミニ四駆やラジコンといった玩具などにもDCモーターが使用されています。小さな製品には、9V程度の小さな電圧で駆動する小型のDCモーターが採用されています。
自動車製品には多くのDCモーターが採用されています。例えば、ワイパモータやパワーシートモータ、パワーウィンドウモータなどが当てはまります。
呼吸補助装置、酸素濃縮器のファンモータなど医療機器に使用。その他、産業ロボットのサーボモータや農業機械、建設機械などにも採用されています。
ブラシ付きDCモーターは、「永久磁石界磁型モーター」と「電磁石界磁型モーター」の2種類。構造がシンプルで、速度をコントロールしない場合、駆動電子回路が必要ありません。デメリットは、ブラシと整流子が消耗品のため定期的に交換する、ブラシから電気ノイズや騒音が発生することです。
ブラシレスDCモーターは、「表面磁石型」と埋込磁石型」の2種類。電源を繋ぎ、駆動回路を使って回転子を回転させます。ブラシレスDCモーターにはブラシと整流子がないので、ブラシ付きDCモーターに比べて寿命が長く、音も静かです。
DCモーターは、電流が流れることにより磁場が発生し、その磁場によって回転運動が生じます。ここでは、各部品の動作を技術的な視点から詳しく見ていきます。
電流の流れと磁場の生成:電流がローターの巻線に流れることで、ローターに電磁力が発生し、ステーターの磁場と相互作用して回転が生まれます。
ブラシとコミュテータの役割:ブラシがコミュテータに接触して電流を供給し、コミュテータが電流の向きを切り替えることで、モーターは連続的に回転します。
DCモーターには、ブラシ付きとブラシレスの2種類が存在します。以下では、両者の構造や特徴の違いについて詳しく説明します。
特徴 | ブラシ付きモーター | ブラシレスモーター |
---|---|---|
構造の複雑さ | シンプルで扱いやすい | 複雑で高度な制御が必要 |
メンテナンスの頻度 | 必要(ブラシ交換) | ほぼ不要 |
効率と耐久性 | 効率はやや低いがコストが安い | 高効率で耐久性も高い |
DCモーターの用途は多岐にわたり、特定の使用環境や要件に応じて構造が異なります。ここでは、代表的な用途と選定基準を紹介します。
DCモーターは、定期的なメンテナンスを行うことで寿命が延び、性能を維持することができます。ここでは、一般的なメンテナンス方法を説明します。
DCモーターの構造を理解すれば、自作や改造にも挑戦できます。ここでは、性能を引き出すための具体的な改造ポイントを紹介します。
例えば、巻線の数を増やすことでトルクを向上させる方法や、電流の制御を強化する回路追加の手法などが考えられます。自作やDIYのモーターで高出力を狙う場合は、放熱処理や電源の選定も重要です。
モーターにはさまざまな種類があり、ステッピングモーターとDCモーターは内部構造ならびに駆動方法が異なります。具体的に、DCモーターは直流電源で回転しますが、ステッピングモーターはパルス信号によって1ステップずつ回転するのが特徴です。また、DCモーターの方が起動トルクが大きいため、高速回転にも対応できます。
さらに、DCモーターはクローズドループ、ステッピングモーターはオープンループを主としているなどもこの2つの異なる点です。