電気自動車などの普及が進み、高性能モーターの需要が爆発的に増加しています。それに伴い、レアアースなどの資源の需要も高まりつつあり、リサイクルも進められている状況です。本記事では、DCモーターのリサイクルに関する現状と課題を分析し、将来の予測につながるようにまとめました。
モーターのリサイクルで注目すべきは、巻線(コイル)です。材料としては、導電性に優れた銅が主に使用されますが、ごく稀に軽量化などを目的としてアルミニウムが採用されることもあります。この銅は、モーターのリサイクルにおいて価値が高い回収対象物です。巻線として使用される銅線は「エナメル線」と呼ばれ、隣接する線同士が短絡しないよう、表面が高分子材料の絶縁被膜(エナメル樹脂)でコーティングされています。
多くのモーター、特に高効率が求められるものでは、界磁(磁場を発生させる部分)に永久磁石が使用されます。フェライト磁石を使用したモーターの場合、銅と鉄鋼にリサイクルする価値があり、磁石自体の回収は経済的観点から優先度が低くなります。しかし、ネオジム磁石を使用したモーターは、ネオジムやジスプロシウムといった「クリティカルマテリアル」を含んでいるため重要です。ただし、磁石は硬くてもろく、強力な接着剤で固定されているため、解体時に破損しやすいという技術的側面やコスト面から課題があります。
製品としての役割を終えたモーターが、再び資源として循環するまでの道のりは、収集、解体、選別という一連のプロセスから成ります。
回収された使用済み小型家電は、内部に含まれる有価物を素材ごとに分離する処理が施されます。このプロセスは、手作業と機械処理の組み合わせで構成されます。
まず行われるのが手解体(前処理)です。比較的回収が容易で価値の高い部品や、リサイクルプロセスに有害な物質は、コンベア上で作業員によって手作業で取り外されます。プリント基板などもこの段階で選別されることがあります。
解体後の製品は、大型のシュレッダーや破砕機に投入されます。ここでは、回転する刃やハンマーによって製品が物理的に粉砕され、数センチメートル程度の大きさの断片にされます。使用される機械は、対象物や目的に応じて、一軸破砕機、二軸破砕機、ハンマーミルなど多岐にわたります。この工程の主目的は、異なる素材で構成された部品を互いに引き剥がし、後の選別工程を容易にすることにあります。
破砕によって生成された混合断片は、そのままでは資源としての価値が低いため、各種素材の物理的・化学的特性を利用した自動選別技術によって、鉄、非鉄金属、プラスチックなどが純度の高い資源として回収されます。選別は通常、量の多いものから順に行われます。
基本的な選別方法は磁力選別です。破砕物の中から鉄や鋼といった磁性を持つ金属(鉄スクラップ)を回収するため、強力な電磁石や永久磁石をコンベアの上部に吊り下げ、鉄片を吸着させて分離します。アルミニウムや銅などの非鉄金属は磁石には付きませんが、導電性を持ちます。この性質を利用するのが渦電流選別機です。高速で回転する磁石ドラムが、非鉄金属片の内部に渦電流を誘導し、この渦電流が磁場との間に反発力を生み出し、非鉄金属片をコンベアの流れから弾き飛ばして分離します。単純なモーターであれば、このプロセスによって鉄、銅、アルミニウムの混合スクラップが得られ、回収される仕組みです。
回収された銅は、ステーターの鉄心に固く巻き付けられ、絶縁被膜で覆われていることが多く、高純度の銅資源として再生するには複数の障壁を乗り越えなければなりません。ステーターから銅巻線を分離する最も一般的な方法は、物理的な力を用いるものです。まず、グラインダーやたがね(チゼル)を使ってステーターの片側の銅巻線の端(コイルエンド)を切断します。その後、油圧プレス機やパンチを用いて、反対側から銅巻線を押し出すか、引き抜きます。この方法は、特に大型モーターに対して有効ですが、多大な労力を要し、工具の扱いには危険も伴います。
スクラップ銅の価値は、純度に直結します。被膜が付いたままの「雑線」と、被膜が除去された高純度の「ピカ線」とでは、リサイクルの観点からも大きな差が生じます。さまざまな手法にはそれぞれ課題がありますが、低コスト・高純度でのリサイクルが実現できるように研究がされています。
希土類磁石の中でもネオジム磁石のリサイクルは、モーターリサイクルにおける課題であり、イノベーションが求められている分野です。コスト、技術、そしてサプライチェーン上の複数の障壁が複雑に絡み合って構成されています。まず経済的障壁として、希土類磁石のリサイクルには高度な技術と多大なエネルギーを要するため、抽出・精製コストが非常に高くなります。その結果、リサイクルされた希土類元素の価格が、価格変動の激しいバージン材(新規に採掘・精製された材料)の価格を上回ってしまうことが頻繁に起こります。補助金や画期的な技術革新がなければ、純粋な市場原理だけではリサイクル事業が経済的に成り立たないのが現状です。
技術的障壁も根深い課題です。ネオジム磁石は、硬さと共にもろさがあります。モーター内部では、性能を最大限に引き出すために強力な接着剤で鉄心に固着されていることが多く、物理的に取り出そうとすると簡単に割れたり砕けたりします。また、希土類元素は化学的に活性で酸化しやすく、一度粉々になると品質管理が難しくなります。
サプライチェーンの障壁も無視できません。そもそも、使用済みネオジム磁石を大量に含む製品(例えばEVのモーターや産業用機械)を効率的に回収し、専門の処理施設まで輸送する大規模なサプライチェーンが確立されていません。また、国境を越えて廃棄物を移動させる際の法的な枠組みも複雑であり、グローバルなリサイクルループの構築を妨げています。
そして製品の設計そのものにも課題があります。モーターは、性能、耐久性、製造コストを最適化するように設計されており、その寿命が終わった後の「解体のしやすさ」はほとんど考慮されてこなかったのです。磁石は、取り出されることを前提とせずに組み込まれています。このため、モーターは今後、より取り出しやすい形で、よりリサイクルしやすくなる設計が求められています。その部分にも注目です。