ブラシレスDCモータには、その名の通りブラシがありません。ブラシや整流子を用いず、半導体を使って電流を制御しているのが特徴です。そんなブラシレスDCモータは、大きくアウターロータ方式とインナーロータ方式に分けることができます。
永久磁石付きの回転子が回転する方式で、磁石を小型化する必要がありません。外側の構造をファンなどの回転軸に活用でき、装置そのものを小型化できるのが特徴です。
内部で、円筒状の永久磁石を取りつけた回転子が回転する方式。外側の同心円上にコイルが配置されていて、回転軸の慣性モーメントが小さいのが特徴です。こちらもモーターを小型化できます。
騒音・ノイズが小さいこともブラシレスDCモータの特徴のひとつです。ブラシ付きDCモータの場合、常にブラシと整流子が接触しているので摩耗が避けられません。摩耗、つまり摩擦が起きるということは火花の発生や摩耗粉の飛散のリスクがあるうえ、相応に寿命も短くなってしまいます。
その点、ブラシレスはそうした物理的接触がないので摩擦・摩耗によるリスクがなく、耐久性に優れているのがメリット。必然的にメンテナンス頻度も減らすことができ、ランニングコストを抑えることもできます。
また、摩擦・摩耗がないのでブラシと整流子が擦れる振動や摺動音の発生もなく、静粛性に優れているという側面もあります。
ブラシレスDCモータは磁気センサからのフィードバック制御によってモーターの状態をチェックしているので、ブラシ付きDCモータよりも緻密な速度制御が可能です。モーターへの印加電圧を調整し、負荷が変化しても回転数を一定にキープすることができます。
半導体で電流を制御しているので、電磁ノイズが発生しにくいのもブラシレスDCモータならでは。ブラシ付きDCモータに比べてエネルギーロスも少なく、高い変換効率を得られます。
エネルギー変換効率が高いので環境負荷も低く、省エネでエコロジーです。電力消費量の40~50%がモーターによるものともいわれるなか、環境にやさしいモーターだといえます。鉛や六価クロム不使用のモーターなら、なお環境負荷は低くなるでしょう。
ブラシレスDCモーターは、ブラシ付きDCモーターと同じく回転軸に発生する慣性モーメントの影響があります。モーターの回転はじめは起動トルクが大きく、多くの電流が必要で適切に制御しなければなりません。また、シャフトが回転する際は一部のエネルギーが熱や振動になって損失されます。
しかし、ブラシレスDCモーターは速度フィードバック信号を常に比較してモーターへの印加電圧を調整しています。負荷が変化した場合でも、低速から高速まで安定した速度で運転可能です。
ブラシレスDCモーターはローター部に永久磁石を使用しているため、薄型でコンパクトにもかかわらずパワーがあります。そのため、装置のダウンサイジングが実現可能です。
ブラシ付DCモーターがブラシと整流子という不可欠な機構があるのに対し、ブラシレスDCモーターは制御回路の配置場所や大きさなどの選択や調整が可能です。そのため機構の空間条件によってさまざまな設計ができ、設計の幅が広がるでしょう。
一見、いいこと尽くめのブラシレスDCモータですが、デメリットも存在します。技術面では、制御回路が必須のブラシレスDCモータには複雑な駆動回路が欠かせないため、設計に高い技術力が求められます。
タイプ別で見ると、アウターロータ型は回転部が外部にあるため、接触による裂傷・擦過傷や火傷のリスクがあり、対策が必要です。また、塵埃などによる汚損からの保護対策もしておかなければいけません。
インナーロータ型では、磁石の強度や耐久性が不足すると高速回転時に遠心力で磁石が破損する可能性があるので、高性能で強度の高い磁石が必須となります。
ブラシレスDCモータは多様な用途で利用されており、特に家電製品で多く使われています。なかでもファンを搭載する電化製品にはブラシレスDCモータがよく採用されています。エアコンや冷蔵庫のファンを動かしているのが、ブラシレスDCモータです。
そのほかでは扇風機やパソコン、自動車の電子機器類などにも使用されており、私たちの生活にとって身近な存在です。
ブラシレスDCモータにはさまざまな強み、特徴がありますが、小型モータは低速回転の設計ができないので、どうしても小型モータを低速回転したい場合には減速機構が必要です。そんな時に役立つのが「ブラシレスDCギヤードモータ」でしょう。
ブラシレスDCギヤードモータとは、ブラシレスDCモータと減速機構の利点はそのままに低速回転かつ高トルク性能を発揮できるモータのことです。減速比の減速装置を使用しているため、一般的なモータよりも運動効率が高いです。
ブラシレスDCギヤードモータはブラシ付きモータと比較して耐久性が高いうえ、高効率かつ低騒音というメリットを有しています。近年では低騒音や伝達効率を意識した各種ギヤボックスも開発されているので、それらの特徴を有したブラシレスDCギヤードモータが製造されているでしょう。
また、低速回転や高トルクの性能を持つモータの中でも、選択の幅が広いのも広く使われている理由の1つです。
ブラシレスDCギヤードモータにおける最大の特徴は、何といっても高トルクが出せるという点です。モータに専用の減速機組み込み一体化することで、大きなトルクだけでなく大幅な省スペースも確保できます。
また、ギヤードモータの特有の特徴も挙げられます。減速機を組み込んだギヤードモータの回転可能な慣性負荷モーメントは、一般的なモータにおける減速比の2乗に比例して大きくなるため、慣性負荷が大きい状況でも駆動可能です。
また、ブラシレスDCギヤードモータは一体化されていることから実機の設計・取り付けにおいて内部スペース活用が行える点も特徴といえます。導入することで設計に幅をもたせることができるでしょう。
ブラシレスDCギヤードモータは、その名の通りブラシレスモータと減速用ギヤを組み合わせていますが、場合によってはギヤボックスを追加することもあるかもしれません。その場合コストが上がるため注意しましょう。
また、減速用ギヤは摩擦抵抗のロスによる発熱が発生する部分なので、減速用ギヤ自身の効率も考慮しなければなりません。
ほかにも、ブラシレスDCギヤードモータは一定方向での回転を基本としているため、電源の逆接続は厳禁です。万が一逆接続をした場合は、モータや減速用ギヤが破損や故障する可能性があります。さらに、過負荷を避けるため、仕様書に記載された定格範囲内で使用し、長時間の連続運転も控えるようにしてください。