ガソリン車のエンジンと同じような役割を果たす電気自動車のモーター。電気自動車のモーターは、利用シーンや求められるスペックによって適したモーターに違いがあります。
このページでは、DCモーターとACモーターの違いについておさらいしながら、電気自動車で採用されるモーターの例をご紹介します。
直流電源で動くDCモーターと、交流電源で動くACモーター。それぞれに長所と短所があり、使用に適するシーンが異なります。
DCモーターは、直流電流を利用するため全体の構造が単純です。電圧も安定していてACモーターよりも制御が容易です。また、安価で製造できる、小さくて軽い、低騒音という特性から、ガソリン車の車載モーターとしても用いられてきました。
ただし、DCモーターは空冷式のため、夏場の急発進や上り坂などの条件下ではモーター温度が使用範囲を超える、ブラシ付きモーターの場合はブラシの磨耗で粉塵が発生する、寿命が短いといった短所があります。
そのため、電気自動車に用いられる際には長寿命で粉塵や騒音が発生しにくいブラシレスDCモーターが採用されます。
ACモーターは、トルクや回転数などの細かい制御がしやすいモーターです。電気自動車に用いると乗り心地を良くするなどの快適性を追求できるため、一般的な高性能自動車にはACモーターを搭載する傾向にあります。
ただ、ACモーターを電気自動車に用いる際の制御は難しく、技術開発に多くの工数を要します。そのため、DCモーターに比べてコストが高くなってしまう点が短所です。
また、速度制御を必要とする動作には向いていません。さらにACモーターは、電源の電圧と周波数の安定性に大きく依存します。電圧や周波数の不安定な環境だと起動しない、負荷がかかりすぎて停止してしまうといったケースもあります。
電気自動車は、搭載されているバッテリーにはDC(直流)、モーターにはAC(交流)が使われています。そもそもバッテリーから出てくる電流はすべて直流で、充電も直流だからです。
かつての電気自動車は、回転速度を変化させるのに適したDCモーターを使い、一定速度で回転させるにはACモーターを使用していました。
近年は、技術の進化によりインバーターを使って交流の周波数を自在に制御できるようになっています。そのため、現在すべての電気自動車では、ACモーターが使われるようになっています。
エンジンは、シリンダーの中でピストンが往復する運動作用によって燃料の熱エネルギーを動力に変えています。ただ、燃費の良いエンジンでもエネルギー効率は40%で、残りは動力として使われず廃熱として失われてしまうのです。一方、モーターの場合、電気エネルギーの約90%を動力に変えることができます。このエネルギー効率の高さが電気自動車にモーターが使われる大きな理由のひとつです。
エンジンのピストンが往復運動を繰り返しているシリンダー内では、燃料の爆発や燃焼が起こっています。その影響により振動や音が発生しているのです。モーターの場合、エンジンのような往復運動がないため走行音が静かで振動もほとんどありません。静かさと乗り心地の良さを追求できることからモーターが選ばれています。
エンジン車が減速する際にも、速度を落とすために燃料が動力となっています。一方、電気自動車の場合、減速時に生じる運動エネルギーをモーターで電気エネルギーに変換してバッテリーに充電しています。減速時のエネルギーロスが少ない、新たなエネルギーに変換できる点も電気自動車にモーターが選ばれる理由です。
エンジン車の場合、加速を効率的に行うためにトランスミッション(変速機)やクラッチが必要です。電気自動車の場合はモーターが加速力を保つための回転数の幅が広いため、変速機を必要としません。エンジン車に比べて部品が少なくシンプルな構造で駆動するため、比較的故障が少ない点もモーターが採用される理由に挙げられます。