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モーターのIP規格とは

産業機械や農業機械、建設機械の設計・購買担当者は、屋外や粉塵・水分の多い環境で使用するモーターの保護性能を確認する場面が多くあります。その判断材料となるのが「IPコード(IP等級)」です。本記事では、IPコードの意味と数字の読み方、産業機械で使われる代表的な等級、防塵・防水対応モーターを選定する際に確認すべきポイントを解説します。

モーターのIP規格とは

IPコードは、電気機器の外郭が、人体の危険な部分への接近や固形異物、粉塵、水の浸入に対して、どの程度保護されているかを示す表示です。国際規格ではIEC 60529がIPコードを規定しています。日本では、現在はJIS C 60529:2026が対応する国内規格です。

回転電気機械であるモーターについては、IEC 60034-5が外被による保護等級(IPコード)の分類・試験を規定しています。したがって、モーターのIP等級を確認する際は、一般的なIPコードの考え方だけでなく、回転電気機械に適用される規格・メーカー仕様も確認することが重要です。

なお、JIS C 0920:2003は2026年1月20日に廃止されており、現在の国内規格を確認する場合はJIS C 60529:2026を参照します。

また、モーターにはIPコードとは別に、エネルギー効率を示すIEクラスがあります。IE1~IE4などの効率クラスはモーターのエネルギー効率に関するものであり、IPコードが示す外郭の保護性能とは異なる評価軸です。モーターを選定する際は、保護性能と効率の両方を確認する必要があります。

参照元:JIS C 0920: 2003 電気機械器具の外郭による保護等級 (IPコード)https://webdesk.jsa.or.jp/preview/pre_jis_c_60529_000_000_2026_j_ed10_ch.pdf

IP規格の数字の読み方

IPコードは、原則として「IP」の後に続く2つの特性数字で構成されます。1桁目は固形異物や粉塵、人体の危険な部分への接近に対する保護、2桁目は水に対する保護を示します。

同じ種類の試験を比較する場合は、数字が大きいほど保護レベルが高くなります。ただし、水に対する保護では、数字が大きいことだけで異なる種類の水試験への適合まで判断できません。特にIPX7やIPX8は浸水に関する等級であり、IPX5やIPX6の噴流水試験への適合を自動的に意味するものではありません。

1桁目:固形異物・粉塵などに対する保護

1桁目は、外郭内部への固形異物や粉塵の侵入、および人体の危険な部分が内部に接近することに対する保護レベルを表します。

0は無保護です。1~4は、規定された大きさの固形異物や人体の危険な部分への接近に対する保護を示し、数字が大きくなるほど、より小さい固形異物に対する保護が求められます。

5は、粉塵の侵入を完全には防止しないものの、機器の正常な動作を妨げる量の粉塵侵入を防ぐ「防じん形」です。6は、規定された試験条件において粉塵の侵入を認めない「耐じん形(dust-tight)」の保護を示します。

2桁目:水に対する保護

2桁目は、水の浸入に対する保護レベルを表します。等級によって試験内容が異なり、鉛直に落下する水滴、さまざまな方向からの水、噴流水、浸水などが対象となります。

0は無保護です。1~4は、鉛直に落下する水滴や、さまざまな方向からの水の飛まつなどに対する保護を示します。5と6は、規定されたノズルによる噴流水に対する保護で、6の方がより厳しい噴流水試験です。

7は、規定された条件で一時的に浸水させた場合の保護を示します。8は、メーカーが指定する条件での継続的な浸水に対する保護を示し、水深や時間などの具体的な条件は製品ごとに確認する必要があります。

また、9は、規定された高温・高圧の水噴流に対する保護を示します。高圧洗浄などを伴う用途では、IP65やIP67だけでなく、必要な水圧・水温・洗浄条件に対応しているかをメーカー仕様で確認することが重要です。

参照元:IP規格(IP保護等級)とは | 用語集 | ベアリング・総合精密部品のミネベアミツミ製品サイトhttps://product.minebeamitsumi.com/faq/glossary/detail/ip-standard.html

産業機械で使われる代表的なIP規格

IP54/IP55

IP54は、粉塵に対する保護レベル5と、あらゆる方向からの水の飛まつに対する保護レベル4を組み合わせた等級です。

IP55は、粉塵に対する保護レベル5と、規定されたノズルによる噴流水に対する保護レベル5を組み合わせた等級です。

IP54やIP55は、屋外設備などで採用されることがあります。ただし、IP等級だけで「屋外使用可能」「雨風に対して十分な耐候性がある」と判断することはできません。実際の使用環境では、温度、結露、腐食、塩害、紫外線など、IPコードでは評価されない条件についても確認が必要です。

たとえば農業機械向けのモーターでは、屋外での使用や水・粉塵への曝露に加え、泥、薬剤、肥料などの影響を受ける場合があります。そのため、IP等級だけでなく、実際の使用環境に対する製品仕様を確認することが重要です。

IP65/IP67

IP65は、粉塵に対する保護レベル6と、規定されたノズルによる噴流水に対する保護レベル5を組み合わせた等級です。粉塵の多い環境や、一定の水流がかかる環境などで採用されることがあります。

IP67は、粉塵に対する保護レベル6と、規定された条件での一時的な浸水に対する保護レベル7を組み合わせた等級です。

ここで注意したいのが、IP67がIP65の単純な上位互換ではないことです。IP67の「7」は浸水に関する試験を示すものであり、IPX5の噴流水試験への適合を自動的に意味しません。噴流水と一時的な浸水の両方に対する保護が必要な場合は、メーカーがIP65/IP67など複数の試験への適合を明示しているか確認する必要があります。

また、建設機械向けのモーターでは、IP等級に加えて、振動、衝撃、温度変化などの環境条件も確認する必要があります。これらはIPコードとは別の評価項目です。

IP等級だけでは判断できない環境条件

IPコードは外郭による固形異物や水などに対する保護を示すものであり、モーターが使用環境に必要なすべての耐環境性能を保証するものではありません。

たとえば、振動・衝撃、結露、腐食性の粉塵や蒸気、油、薬品、塩害、紫外線、周囲温度などについては、IP等級とは別に確認する必要があります。

特に農業機械、建設機械、屋外設備などでは、単に「IP65だから大丈夫」「IP67だから防水性が高い」と判断せず、実際にモーターがさらされる環境を具体的に整理することが重要です。

IP等級のモーターを選定する際のポイント

まず、モーターを設置する環境を具体的に洗い出します。屋外か屋内か、粉塵や水分がどの程度発生するか、噴流水や浸水の可能性があるか、洗浄作業を行うかなどを整理します。

次に、必要なIP等級の試験内容を確認します。たとえば、水に対する保護では、単に数字を見るのではなく、「飛まつ」「噴流水」「一時的な浸水」「継続的な浸水」「高温・高圧水噴流」のどれが必要なのかを明確にします。

洗浄作業を伴う用途では、IP等級だけで判断しないことも重要です。洗浄水の圧力、温度、噴射距離、洗剤や薬品の使用など、実際の洗浄条件にモーターが対応できるかをメーカーに確認します。

また、必要以上に高い保護等級を要求すると、製品によってはシール構造などの違いによってコストや重量に影響する場合があります。そのため、使用環境に対して必要な保護レベルを明確にし、過不足のない仕様を選定することが重要です。

さらに、モーター本体だけでなく、端子箱、コネクタ、ケーブル引込部、軸端部などの構造や仕様も確認します。製品によっては、構成部品や取付条件によって実際の保護性能が異なる場合があるためです。

標準品が自社の要件に合わない場合は、使用環境や取付条件に合わせたカスタム設計に対応できるモーターメーカーへ相談することも選択肢のひとつです。

まとめ

モーターのIPコードは、外郭による固形異物や粉塵、水などに対する保護レベルを示す重要な指標です。国際規格ではIEC 60529がIPコードを規定し、回転電気機械についてはIEC 60034-5が外被による保護等級を規定しています。日本では、現在はJIS C 60529:2026が対応する国内規格です。

IPコードの1桁目は固形異物や粉塵、人体の危険な部分への接近に対する保護、2桁目は水に対する保護を示します。ただし、水に対する等級は試験内容がそれぞれ異なるため、数字が大きいだけで単純にすべての水環境に対して高性能になるとは限りません。特にIP67はIP65の単純な上位互換ではなく、噴流水と浸水の両方への対応が必要な場合は、それぞれの試験への適合を確認する必要があります。

防塵・防水対応モーターを選定する際は、屋外・屋内といった設置場所だけでなく、粉塵、水、洗浄条件、油や薬品、振動、温度、結露、腐食など、実際の使用環境を具体的に整理することが重要です。IP等級だけで判断せず、メーカーの仕様書や試験条件を確認したうえで、自社製品に適したモーターを選定しましょう。

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